2009年・スイス/ドイツ・93分 監督・脚本/パディム・イェンドレイユ 撮影/ニールス・ポルプリンカー ステファン・クティー 録音/パトリック・ベッカー <ドキュメント>
ウクライナ出身のスヴェトラーナ・ガイヤー、84歳の翻訳家。彼女の半生をたどりながら、文学によって高められる人間の尊厳を静に描く。
自宅には華奢な姿に似つかぬ重厚な装丁の本が積まれている。「罪と罰」「カラマーゾフの兄弟」「白痴」などロシア文学の巨匠・ドストエフスキーの長編小説。それらを生涯かけてドイツ語に翻訳した。
1923年ウクライナ・キエフに生まれ、スターリン政権下で少女時代をすごし、ナチス占領下でドイツ軍の通訳として激動の時代を生き抜いた彼女は、なぜドストエフスキーを翻訳したのだろう?
高潔なる知性と独自の哲学を持って、ドストエフスキー文学の真の言葉をさがす横顔には、戦争の記憶が深いしわとなって刻まれている。
自宅で翻訳を行い、静に区足す彼女に、ある日大変な出来事が。工場の教員をしている息子が、実習中に頭に怪我を負い、半身不随のとなってしまった。彼女は翻訳と大学講師の職を休む事にした。寝たきりの息子の世話をするため毎日病院を訪れる。ある日息子の食事を用意していたスヴェトラーナは、あることに気付く。それは封印していた過去の扉、父親とのある記憶につながっていた。
3月8日(土)より 名演小劇場にて公開
岩田和憲