地域人権ネット主催で、第17回「人権を映画で観る上映会」が、2月12日から14日までの3日間、ウインクあいちと名古屋市西文化小劇場を会場に開催され、延べ650人を超える参加者がありました。
この上映会は、人権の視点から映画を捉え、映画を通じて人権と民主主義をともに考え合い、映画文化の発展に寄与しようとする企画です。
初日に行われた前夜祭講演会では、丹波正史代表による主催者挨拶に続いて、映画評論家の石子順氏が「映画が人権を語るとき 薩チャン正ちゃんの思い出」をテーマに講演。
石子氏は「薩チャン(山本薩夫)と正ちゃん(今井正)は映画会社から自立した映画監督の双璧」
「山本薩夫は叙事詩的・男性的社会性、今井正は叙情派・しなやかなリアリズム・個人的世界」と両監督の作品の特徴を紹介。
両監督は「独立プロ映画運動の旗手、日本映画の前進と発展を押し進めた巨匠、日本映画のリアリズムを確立した。二人の共通点は現実を見つめ、不正不平等を暴いた。」と評価。
山本薩夫監督作品について、1947年の「戦争と平和」(山本)から52年の帝国陸軍の真相を描いた「真空地帯」、1960年に山本宣冶を主人公に作られ浅沼稲次郎社会党委員長の暗殺事件の後公開された「武器なき斗かい」、ドロンと消えるのではない生身の人間としての忍者を描いた「忍びの者」、松川事件の外伝的な中身の「にっぽん泥棒物語」などを紹介。
今井正監督作品では、八海事件をテーマに冤罪事件を取り上げた「真昼の暗黒」、原爆問題を扱った純愛物語、人種差別に取組んだ「キクとイサム」、別れのシーン、部落差別の残酷さに迫った「橋のない川」などなど、資金不足のなかでのスタッフ、キャストの奮闘も詳しく紹介。
「不正・不平等」「弱者」「貧乏」「圧政者」を描き、「人権」「人道主義」「反戦平和」を楽天性、正義感、風刺、ユーモア感覚をおもしろいが政治的信念を貫くのが二人の作品であるが、いまの日本映画には反戦的な作品が減ってきていると指摘もされました。
今回の作品上映の中で、「謀殺・下山事件」はこの映画だけ観たい観客が多く、最も盛況の入りとなりました。
感想文からは、
●いくつかの作品の背景の戦後史を若い人に伝えることが大切だ。
●「映画は社会の不正を暴くものであるべき」との山本監督の言葉に感激。
●講演を聴いて、映画ファンを自負していたが知らないことが・・・
など、多くの感想や意見や希望が寄せられました。今回のアンケートも参考に、次回も人権に関する名作を上映したいと思います。