2013年度 戦後の人権問題及び部落問題の研究討論会
地域人権ネット主催による、「戦後の人権問題及び部落問題の研究討論会」を3月22日・23日の両日、名古屋国鉄会館を会場に開催されました。この研究討論会は、人権問題の研究者や活動家が集まり、報告、討論するものです。
研究討論会は、特別報告として小樽商科大学荻野富士夫教授による「99%の戦争支持・協力と1%の戦争批判・抵抗-国民はどのように戦争に熱狂したのか、戦争をどうして阻止できなかったのか」と題した報告で始まりました。この中で荻野教授は、「戦争への抵抗について大学で授業を行い、学生からの感想で、99%戦争支持というのは間違っているのではないか。普通の民間人にも反対の人はもっとたくさんいたのではないか」という意見が出され、「この問題もっと突き詰めて行かなければいけないと感じた。」と述べられました。
続いて、京都橘大学碓井敏正名誉教授より「政治社会情勢と地域社会運動の課題」と題して報告があり、「若者の半分は非正規雇用であり、将来を悲観している若者が多い。若年層へ富の移転や社会保障システムの見直しも必要。」と話されました。地域人権ネット丹波正史代表からは「戦後史と部落問題」と題して報告があり、「①部落問題での独自性や特殊性を加味した把握の展開。②これまで蓄積されてきた研究成果を踏まえながら、見直しが必要な事柄については大胆に踏み込む。③それぞれの分野の研究成果を取り入れる姿勢を堅持し、その中で部落問題を位置づけ解明していく。という視点から出発する。」と戦後史の部落問題をどう捉えていくことが大事かと報告がありました。部落問題研究所の西尾泰広氏からは「北原泰作が残した資料から見えてくるもの」と題して、北原氏の残した莫大な資料を整理して研究していると経過報告があり、大阪経済法科大学奥山峰夫教授は「行政学から見た同和行政」との題で報告がありました。
2日目は、山梨県立大学寺久保光良元教授より「生活保護をめぐる問題状況」と題して、1975年から2014年までの福祉論の歴史を振り返り、生活保護改悪について報告。
鳥取大学藤田安一教授は、「地域づくりの運動論」、立命館大学石倉康次教授は「部落問題の解決過程と社会調査」、大阪経済法科大学丹羽徹教授は「安倍政権の特質と今後の政治展望」、全国人権連新井直樹事務局長は「最近の人権問題について」、福島大学丹波史紀准教授は「原発被害と福島の課題」、吉村駿一弁護士は「身元保証と法的問題」と題して報告があり、それぞれの報告について活発な討論が行われました。各参加者が問題意識と研究を深めた個別課題について深め合うことができ、これからの社会問題を考えていく上で大変貴重な報告・討論会でした。
この研究発表会の記録は例年のように後日まとめられた冊子が刊行される予定です。
地域人権ネット主催による、「戦後の人権問題及び部落問題の研究討論会」を3月23日・24日の両日、ウインクあいちを会場に開催しました。この研究討論会は、人権問題の研究者や活動家が集まり、報告、討論するものです。
研究討論会は、基調報告として京都橘大学碓井敏正教授による「現代における地域人権運動の課題―政治情勢を踏まえて」と題した報告で始まりました。この中で碓井教授は「貧困問題は人間関係という資本をどうやって地域で形成していくかが大事である」とし、無縁社会を無くし、新しい絆を作っていくことが必要であると述べました。引き続き基調報告では、「生活者の権利と生活を守る運動論」と題して、地域人権ネット丹波正史代表の報告があり、「2035年までの間に、単独世帯、夫婦のみ世帯、ひとり親と子世帯などの高齢者世帯が増加する。高齢者の孤立と生活支援のあり方が問われている」とし、権利擁護組織の立ち上げ準備を進めていると報告がありました。その後、元山梨大学寺久保光良教授の「地域社会と貧困問題」、名古屋北法律事務所山内益恵弁護士の「高齢者の法的支援と権利擁護」の報告がありました。
2日目は、「高齢者の一人暮らしの実態」と題して、海部東部介護支援センター伊藤みほ氏より報告があり、一人暮らし高齢者の事例を上げ、ケアマネジャーから見た高齢者の実態の報告がありました。続いて、立命館大学石倉康次教授の「地域社会における福祉運動論」と題して報告があり「新しい公共を排除するのではなく、人権擁護を高めていくために市民が関わっていく仕組みが大事」と述べました。続いて鳥取大学藤田安一教授の「地域づくりの運動論」と題して報告があり、鳥取市庁舎の新築・移転をめぐる住民投票運動について説明があり、「庁舎の建設をめぐって、全国初の住民投票が行なわれ勝利した。鳥取市制史上、特筆すべきことで、まさに歴史的意義をもっている」と報告がありました。また、大阪経済法科大学丹羽徹教授の「憲法9条をめぐる動向と憲法を守る運動」、全国人権連新井直樹事務局長による「地域人権憲章について」、大阪経済法科大学奥山峰夫教授による「最近の報道とみる部落問題」の報告があり、それぞれの報告について、活発な討論が行なわれました。今回の研究討論会で、地域人権憲章や地域社会と協同的運動について深め合うことができ、これからの社会問題を打破していく上で、大変貴重な報告でした。